tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「失われた10年」:ダブルデフレ

2008年06月13日 10時52分42秒 | 経済
「失われた10年」:ダブルデフレ
 プラザ合意による急激な円高で、多くの企業がコストの安いアジア諸国などに出て行き、日本経済の空洞化などといわれる中で、アメリカは日本に、「内需拡大」をしなさいと助言します。これは円高の痛み緩和の麻薬で、後からの結果を一層ひどいものにした追い討ちでした。ことの本質が理解できなかった政府は、真面目に「前川レポート」、新前川レポート」などを出し、「内需拡大、金融緩和、労働時間短縮」などを推奨しました。

 このときの特徴は、極端な金融緩和政策です。銀行は競って金を貸し、その金は土地投機に向かい、バブルになりました。サラリーマンの賃金では一生かかっても、まともな住宅は買えなくなりました。しかし労組は、第2次オイルショックの経験がありますから、余計な賃上げは要求せず、生活物価の面では「自家製インフレ」は起こりませんでした。

 バブルの時は、みんな、資産価値の上昇で、コスト高による不況を忘れていましたが、バブルが1991年に崩壊してからは、①土地やゴルフ場会員権などの「資産デフレ」と、②国際競争力のないものの価格が下がる「物価のデフレ」の2つが明確になり、ダブルデフレの「失われた10年」に入っていきます。
 
 2007年の4月「 2種類の物価」というブログに書いてありますが、値上がり目的でない「実需」だけになれば地価は大幅に下がります(今の原油もそうでしょうか)。まだ都市の一部以外では下がり続けています。各種商品やサービスの国際価格に向けて下がります。今までこれが続いてきました。

 一部の学者・評論家は「デフレがデフレを呼んで、デフレスパイラルになる」などと心配しました。インフレはスパイラルになります。ドイツでは物価が1兆倍になったこともありました。しかし、デフレは限度があります。日本の物価が、外国の物価と同じになれば止まります。そこで賃金の下落も止まります。

 それでも、デフレは、実はインフレより恐ろしいと思います。この10年、15年で、日本社会は随分劣化しました。賃金も下がりました。定職をもてない人も増えました。やり場のない不満でしょうか、異常な犯罪も増えたようです。長すぎたデフレの影も一因のような気がします。その原点に「プラザ合意」があるとしたら、日本は今回の経験で、「大幅な為替レートの変更(切り上げ)」への回避策や、対応の仕方を十分学んでおく必要があるのではないでしょうか。

 蛇足ですが、中国は今、その圧力にどう対抗するか悩んでいるようです。


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